医師が転科を考える理由とタイミング
医師が転科する理由やタイミングは、人それぞれ異なるでしょう。
転科は、今後のキャリアにも影響を与えます。曖昧でいい加減な理由によって転科をすれば、医師としてのキャリアに悪影響を及ぼしかねません。
転科のチャンスは決して一度きりではありませんし、出戻りや複数回の転科で成功を収めた医師もいます。
しかし、限られた時間を無駄にしないためには、慎重に見極める必要が出てくるでしょう。
転科の理由とタイミングについては、それが本当に適切なものかどうか冷静になって考えることをお勧めします。
では、具体的にどのような理由で転科を考える医師が多いのでしょうか。主な理由を挙げてみましょう。
・他の分野や領域に関心・興味を抱いたため
・将来やキャリアプランを検討し直した結果
・結婚や子育てなどプライベートな点を考慮して
・社会貢献や地域貢献をより強く意識した結果
・体力的・精神的に転科せざるを得ないため
こうした理由を頭に思い浮かべた時は、転科を考える重要なタイミングとなり得ます。
しかし、その理由がネガティブなものの場合には、少し落ち着いて考える必要がありそうです。
医師が転科をする事で得られることとデメリット
では、実際に転科することでどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
転科する状況やケースによっても異なりますが、一般的に考えられるメリットとデメリットについて見ていきましょう。
転科で得られること
・医師自身に合った医療分野と出会える
・新たな知識や技術を学ぶことができる
・自身の存在意義を確認することができる
・医療業界や社会に貢献することができる
・キャリアや年収がアップする可能性がある
・プライベートを優先・充実させることができる
転科した医師が必ず得られるとは限りませんが、こうした可能性を考え転科を検討する医師は少なくありません。
特にやりがいを少しずつ感じなくなってしまっている医師にとって、転科は心機一転新たなスタートを切るきっかけとなるでしょう。モチベーションを奮起させるためにも効果的であると言えそうです。
転科によるデメリット
・今までの実績やキャリアが通用しない場合がある
・転科前のイメージとのギャップを感じ、後悔するリスクがある
・転科により収入が減る可能性がある
・指導される立場となり、また、指導する医師が年下となる可能性が高い
転科には不確定要素が多く、年収や自身との相性、職場環境等に関しては実際に診療科目を移ってみなければわからないことが多いのも事実です。
弱い志望動機のまま行動に移せば、上記のようなデメリットやリスクが現実のものとなる可能性が高いでしょう。
このように、メリットとデメリットのバランスを考えつつ、転科の決断を下すことが求められてきます。
転科しやすい・転科しにくい科目
数多くの診療科目や診療分野が存在する中、キャリアの途中から移ることに関する難易度は各科目で異なってきます。
ここからは、一般的に転科しやすい・転科しにくいと言われる科目についてまとめていきます。
転科しやすい診療科目
転科のしやすさを考える際には、それぞれの診療科目において不可欠な技術や知識、あるいは各科目のニーズなどを考慮する必要があります。
まず「技術や知識」の観点に主眼を置いた場合、内科への転科は比較的やさしいと言えるでしょう。
眼科や皮膚科などもそうですが、高度な技術を要求される事が少ない科目ほど、転科しやすい状況となっています。
ただし、内科であっても脳神経内科や心臓内科、腫瘍内科などの専門分野は例外です。
脳神経外科から脳神経内科への転科などは比較的容易ですが、別の分野への転科となる場合には、これまでのキャリアにどの程度即しているかが、非常に重要なポイントとなってくるでしょう。
次に、ニーズの高い分野、つまり医師不足の課題を抱える分野も、比較的転科しやすい傾向があります。
産婦人科、救急科、小児科、麻酔科などが代表的な例です。
内科から外科への転科は困難
外科は医師不足が深刻な科目の一つではあるものの、転科に関しては難度が高い分野です。
特に、内科医から外科医への転科となると難しいと言えるでしょう。
外科は深い専門知識に加えて、オペの技術が最重要となる科目です。
やはり手先の器用さ、状況判断能力、それを生み出す豊富な経験を求められるため、内科医としての経験を重ねている医師であっても、外科医として再スタートを切ることは容易ではない現状があります。
どの科目でも外科医のスキルは歓迎される
一方で、外科医の持つ経験や知識、技術はどの分野でも生かすことができるでしょう。
外科医の転科先として一番多い傾向にあるのが、内科です。
年齢による体力の低下や手先の衰えなどを、転科の理由とされる先生も多いと聞きます。
ですが外科医の持つ「手術の知識」や「患者の病変に対する対応力」は内科分野でも大いに発揮されますし、実際にオペを行う外科医とのコミュニケーションにも活きますので、歓迎されやすい状況です。
また、救急科や産婦人科など、外科医としての知識とスキルがなければ活躍できない分野への転科でも、外科医として培った経験が重宝される事は間違いありません。
精神科への転科は容易ではない
他分野から精神科への転科については、容易ではないことを理解した上で検討する必要があります。
精神科医は他の分野と比べて、患者やその家族とのコミュニケーションの重要性がより高くなっています。
精神疾患を患っている患者はそれ以外の疾病を患っていることも多く、また、精神面に不安を抱えている分、意思の疎通が図りにくい状況が多々あります。
通常の患者とは異なる精神疾患者との接し方などの高度なコミュニケーションスキルが、現代の精神科医には必要とされいるのです。
また、精神科は定時で帰宅できる科目だと多くの医師が思っていますが、緊急入院や容体の急変などが意外と多い科目でもあります。
深い専門知識に加えて多くの実地経験が必要とされるため、転科しやすい分野とは言い難いでしょう。
転科先の病院について
同じ転科であっても、「これまで勤めていた病院内での転科なのか」それとも「勤め先の医療機関ごと移るのか」によって、難易度や働きやすさが変わってきます。
その点についてまとめてみましょう。
同じ病院内で転科する
勤める病院はこれまでと変わらず、所属する科目だけ変更するという転科の仕方もあります。
共に仕事を行う医師や看護師などは変わるかもしれませんが、勝手知ったる院内で継続して勤務するため、病院の方向性や考え方などを理解して働くことができる点がメリットです。
元いた科目の医師とのコミュニケーションが図れる点や、患者との接し方などに大きな変化がないことなども、多くの場合はメリットと感じられるでしょう。
同じ病院内での転科は、それぞれの科目の上司や担当医師等に相談して理解が得られれば、比較的スムーズです。
中には、経験を積むことを目的に他の科目のお世話になることが可能な医療機関もあります。
そうした過程を経てから本格的に転科すれば、転科後に問題が起きる事も少ないでしょう。
一方で、病院によっては科目ごとに派閥が分かれているケースもあったり、転科をよく思わない医師が存在している可能性もあります。
同じ病院内で転科する際は、その辺りも見極めつつ行動へと移す必要がありそうです。
別の病院に転職すると同時に転科する
転科と共に新しい医療機関へと移る場合には、転職活動を行う必要が出てきます。
自ら求人情報を探し、応募や面接などの作業を経て勤務先を移らなければいけません。
同じ病院内での転科よりも手間と時間、労力なども必要となり、転職の成否にも目を向けることも重要になってくるでしょう。
転科前と後の担当分野にもよりますが、大幅に路線変更を行う場合、転職先の医療機関も安易に受け入れるのが難しい状況が生まれます。
転職活動中、この辺りをどのように乗り越えるのかも大切なポイントとなってくるはずです。
転科に成功したとしても、転職先の病院が自分に合っているとは限りません。
転科先の科目においては、面識のない医師や、年下の医師に指導を仰ぐ形も考えられます。
年収も一時的に下がる可能性が出てくるでしょう。
このような状況に耐えることができるのか、改めて自分自身に問うた上で転職・転科へと踏み出す必要がありそうです。
転科先を決める際に注意すること
転科を行う前には、「医療機関や診療科目を移ることが、自分の将来にとって本当に有意義か否か」について、慎重に見極めることが求められます。
ここでは特に着目していただきたい、転科先決定のポイントについてまとめました。
転科した経験のある医師が在籍しているか
転科は医師にとっても挑戦であり、不安も伴うはずです。
そのような方々にとって大きな助けとなるのが、転科経験を持つ医師です。
同じ院内での転科に関してもそうですが、特に異なる病院へ転職するケースに関しては、その先に転科経験を持つ医師が在籍しているかどうかは非常に重要なチェックポイントとなります。
もし転科経験のある医師がいれば、その病院は転科の医師の受け入れ態勢が整っている可能性が高いと言えます。転科に対して理解されやすいため、同僚の医師や看護師たちの抱く抵抗感も少なく、働きやすいと感じられるでしょう。
転科した医師を対象とした専門医取得プログラムの用意はあるか
転科医師の受け入れ態勢の程度は、転科する医師に向けた「専門医取得プログラム等が備わっているか」によっても変わってきます。
「専門医は目指していない」と考える医師もいるかもしれません。
ですが重要なことは、こうしたプログラムが用意されている「体制や環境が構築されているか否か」です。
転科した医師に対するプログラムやカリキュラムが整っていれば、年齢を重ねてからの転科であっても、活躍可能な技術や知識を無駄なく身につけることができるでしょう。
転科を歓迎している医療機関でも、このようなプログラムやカリキュラムが備わっているとは限りません。
病院を変更する際には入念なリサーチをし、自身が成長できる体制や環境が整えられているかの確認を怠らないことをお勧めします。
医師の転科の決断は長いスパンで考えて慎重に
「もっと興味のある科目に移りたい」「チャレンジしてみたい」というだけの理由で安易に転科することは禁物です。
転科した先には何があるのか、将来のキャリアプランにとってどれだけの意義があるのか、長いスパンで考えつつ慎重に決断することが求められます。
転科後、自分の肌に合わないと感じ、診療科目を戻すことも不可能ではありません。
しかし、それは医師としての貴重なキャリアや信用に悪影響を及ぼす可能性が生じます。
特に、「現在の職場で働くことが息苦しい」、「担当している分野が合っていない気がする」、「今の診療科目にやりがいが見出せない」などネガティブな理由を抱き転科を検討している医師の方は要注意です。
その先にポジティブな転科の理由が見出せればいいのですが、そうでなければ転科できたとしても、キャリアを充実したものにはできないでしょう。
転科を決断したら、1日でも早く行動する
もし慎重に考えた結果として「転科を決断した」場合には、できるだけ早く行動へと移すことをお勧めします。
特に転職活動を伴う場合には、早ければ早いほどキャリアにも良い影響を及ぼすでしょう。
転科前と後の担当分野にもよりますが、新たな知識や技術を身につける必要がある点は変わりません。
早めの行動により、そうした新たな知識や技術を身につける時間を、より多く確保することにも繋がります。
医師はサラリーマン等とは異なり、40代以降でも転職市場価値が急速に下がることはありません。
ですが転科医師を受け入れる医療機関側からすれば、より若い医師を重宝する傾向があることは否めません。
受け入れる側が指導しやすいことも、その理由の一つです。
また、医師の転科は研修や勉強期間も含めると、数か月~数年が必要になる事も珍しくありません。
行動するタイミングが遅くなればなるほど、新たなスタートを切る時期も遅れてしまいます。
勇気のいる一歩ではありますが、転科を決断した後は、できるだけ早い段階から転科に向けたアクションを行っていくことをおすすめします。
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