採用面接対策─大学医局以外に転職を考える医師へ

転科・転職考察

更新日:2019.07.19

採用面接対策─大学医局以外に転職を考える医師へ

医師にとって転職の成功の鍵を握るのは『面接』

転職時、多くの医師が「面談や面接の内容よりも、これまでの実績や経験で採否が決まる」と思いがちですが、決してそうではありません。

 

たしかに積み上げてきたキャリアや技術は重要視されますが、これからの時代は患者とのコミュニケーションやチーム医療による他職種との連携が欠かせない状況です。
そのため、いかに意思疎通が図れるかという点も、採否を決定する重要な要素となってきている傾向があります。

 

また、採否のみならず、面接の内容いかんによって「採用時の待遇」が変わることも珍しくはありません。
より好条件の転職を勝ち取るか否かも、面談や面接にかかっていると言えるでしょう。

 

医師の採用面接時にありがちな採用側とのギャップ3つ

医師が転職で成功するためには、できる限り採用側とのギャップを埋めておく必要があります。
特に面接においては、このギャップの大小が採否に大きな影響を与えることになるでしょう。

 

言わずもがなですが、ギャップが小さければ小さいほど採用される可能性が上がります。
もしギャップが大きかったとしても、医療機関側の想像以上に医師の能力が高いと面接の段階で感じられれば、採用だけではなく条件交渉にも有利に働くはずです。

 

ここでは、医師と医療機関側の間に生じがちな3つのギャップについてご紹介します。
これらを面接対策として意識することで、より転職の成功へと近づくことができるでしょう。

 

①採用者側に色々期待しすぎてしまう

医師は面接の際、履歴書や職務経歴書をはじめとした応募書類を用意することになります。
多くの医師はこれにより実績を十分にアピールできると考えるのですが、ここで採用者側とのギャップが生じています。

 

まず、採用者側は応募書類に目を通しますが、それだけで全てが伝わるとは限りません。
医療機関側が欲している情報が記載されていない可能性もあります。


医師専用の転職エージェントを利用した際も同様のことが言えるでしょう。
「コンサルタントから話を聞き、自分のことは理解してくれているはずだ」と思い込んでいると、面接で十分なアピールができず、採用が遠のいてしまうというケースが見受けられます。

 

そのため、応募書類やコンサルタントからの情報だけで「自分の実績や能力を正当に評価してくれているだろう」という期待を過剰に持つことは、控えた方がいいでしょう。
あくまでも面接の場で丁寧に自らの実績や能力を伝えることを重視し、応募書類等はそのきっかけ作りに活用することをおすすめします。

 

②アピールする部分が"結果"だと思いこむ

これまで関わった症例や携わってきた医療は、実績としてアピールできる大きなポイントです。
しかし、その結果にこだわり過ぎると採用者側とのギャップが生まれてしまいます。

 

医療機関側が知りたいのは過去の実績以上に、その経験を新しい職場でどう生かすのか、という点です。
面接においてその点が明確にならなければ、携わった症例数が多かったとしても、採用の可能性が上がることはありません。


実績は実績としてアピールしつつ、それをどう活用しながらさらに成長していくのか、あるいはその医療機関に貢献していくのかを面接で語ることが求められてくるのです。

 

③採用者側が用意するポジションとの相違がある

医師を募集している医療機関は、すでに欲する医師像をある程度固めているケースが大半です。
いくら優秀な医師であっても、その医師像に当てはまらなければ、採用されるケースは少ないでしょう。

 

チームのリーダー的存在を求めていることもあれば、あるいは、リーダーはすでに存在しているため、各医師や職員等の潤滑油になる存在を求めているなど、用意しているポジションは医療機関ごとに異なります。
求める医師がプロフェッショナルかジェネラリストか、といった違いもあるかもしれません。

 

そのため、採用者側が求めるポジションに合致するような医師であることを面接でアピールすることが求められます。
応募先の内情をよく知るキャリアコンサルタントから、事前に情報を得ておくのもおすすめです。
これを実践すれば、医療機関側とのギャップも最小限に抑えることができ、採用の確率上昇へと繋がるでしょう。

 

医師の採用面接で注目されるポイント3つ

次に、応募書類や医師としての実績・キャリア以外で、面接時に病院や診療所側にチェックされている点をまとめます。
これらは医師が疎かにしがちな点でもあるため、是非ご参考にしていただけたら幸いです。

 

①第一印象を左右する『外見』

医療現場だからこそ、医師の外見を採用基準の一つとする医療機関は多いものです。
「実績があるから大丈夫だろう」と考えず、見た目や身だしなみといった外見も整えた上で面接へと臨みましょう。

 

第一印象を良くするために意識したい点を挙げてみます。

・スーツを着用する
・ヒゲは極力剃る
・ヘアスタイルは、男性は短め、女性はおでこを出し後ろで束ねるなどする
・派手なネクタイはしない
・アクセサリーは腕時計と結婚指輪程度にとどめる
・女性は落ち着いたナチュラルなメイクを意識する
・シワや汚れのない靴を履く
・爪は短く整え、女性はメイク同様ナチュラルなマニキュアを意識する

総じて言えば、清潔感を与えられるかどうかが重要なポイントとなります。

 

また、表情も外見を大きく左右する要素の一つとなるでしょう。
険しい表情は禁物であり、常に柔和な表情を心がけたいものです。

 

 

②書面では伝わらない『医師の人間性』

これからの医師に求められるのは、いかに人間味があり、円滑なコミュニケーションが取れ、マナーを守って業務に邁進できるかといった点です。
つまり、人間性も医療機関が採用するか否かを決定する重要な要素となっているのです。
人間性は応募書類では伝わわない部分であるため、面接では必ずチェックされていると認識しておきましょう。

では、医師の人間性とはどのような点に現れるものなのでしょうか。
面接の際に意識しておきたい点についてまとめます。

・時間を守る ・相手の年齢や立場に関わらず丁寧な言葉遣いができる
・挨拶ができる
・相手の目を見て話すことができる
・相手に失礼ではない立ち方や座り方ができる
・不平不満や誰かを貶める表現をしない
・常にはっきりとした言い方や表現で対応できる

当たり前の事ばかりかもしれませんが、このようなことが意識できれば、医療機関の望む人間性が備わっていると判断してもらえるでしょう。
また、名刺の差し出し方や受け取り方、応募書類等の渡し方、資料の広げ方なども面接時に見られるポイントです。

 

③何気ない会話からわかる『コミュ力・対応力』

面接中、医療機関の担当者から、家族や趣味についてなど業務とは全く関係のない話を切り出されることもあるかもしれません。
そのような何気ない会話から、医師のコミュニケーション能力や対応力を見極めようとする医療機関もあります。

 

昨今では、患者や同僚の医師・看護師とのコミュニケーション能力が、業務を円滑に進めるために必須であると考える医療機関も多い状況です。
面接で適切に質問の意図を汲み取ることができ、スムーズに対応できれば、コミュニケーション能力や処理能力が高いと印象付けることができるでしょう。

 

もしコミュニケーションに苦手意識を持つ医師の方は、日常の何気ない会話の中で様々な話題に対応できるよう意識することで、対応力を上げていくことをおすすめします。

 

医師の採用面接の流れと事前に対策すべき質問と答え方

医師が医療機関などと面接をする際の流れや、採用側とどのようなやり取りがなされ、それがどのように採否に影響するのかについて、ご紹介します。

 

医師採用面接の流れ

まずは医師採用の際の面接の流れについてです。
面接は概ね、以下のような流れで行われていきます。

1.医療機関や企業などからの概要説明
2.医師の自己紹介
3.質疑応答
4.条件交渉
5.逆質問
6.調整事項の相談

上記の順序は採用側の都合等により前後することがあります。
挨拶程度を済ませた後、医師の自己紹介や質疑応答から面接が開始するケースも少なくありません。
どのような流れでも対応できるようシミュレーションをしておきましょう。

 

採用面面接で想定される質問と答え方

実際にどのようなことを聞かれるのかはわかりませんが、医療機関側から尋ねられることを大まかに想定することは可能です。
少なくとも答えを用意しておきたい質問についてまとめましたので、ぜひ面接対策にご活用ください。

 

Q1.経歴を交えて自己PRをお願いします。

面接の最初に、このような質問をされますが、ポイントは、経歴を簡潔に述べながら実績をアピールすることです。
このとき、職務経歴書など提出した応募書類の内容と齟齬がないように気をつけなければいけません。

 

最も意識したい点は、その経歴が面接側の医療機関や企業の求めるものと合致しているか否かです。
どのような人材を求めているのか、相手側のニーズを事前にリサーチし、携わってきた症例やプロジェクト、成果として認められる診療ケースなどをまとめ、丁寧に伝えるようにしてください。

 

Q2.転職しようと思った理由をお教えて下さい。

転職理由も必ずと言っていいほど尋ねられますが、採用側がこの質問をする理由は、「転職後、働き続ける意思があるかどうか」を確かめるためです。

 

これを意識したとき、医師は「ポジティブな理由により転職を決意した」ことを相手側に伝えなければいけません。

・新しい分野や領域に興味を持ったため
・自分の可能性を試してみたいと感じため
・新たなチャレンジをしたいと考えたため
・正当に評価してもらえる組織で働きたかったため
・知識や技術をより多く、あるいは幅広く身につけるため

こうした前向きな理由とともに、「それがここであれば叶えられると考えた」という点も伝えることができれば、転職の理由として正当性を持ち、且つ志望動機も正確に理解してもらうことができるでしょう。

 

「人間関係に悩んだ」であったり、「待遇に不満があった」というネガティブな理由では、「同じ状況になったら、また辞めてしまうのか?」と問われた時に答えづらくなってしまいます。
問われずとも、面接官にそう思われればマイナスのイメージを与えることになるでしょう。

 

この点を意識して、転職理由はあくまでもポジティブなメッセージで回答することをお勧めします。

 

Q3.10年後のキャリアプランについて教えて下さい。

キャリアプランについて尋ねられた際には、できる限り具体的に答えることが求められます。
そしてそれは、当然これまでのキャリアと継続性や連続性が見られなければなりません。

 

過去に積み上げてきた経験と、それを新天地でどう生かすのかについて丁寧に語りましょう。

 

具体的にどのような技術を身につけていたいのか、どのような形で応募先や社会に貢献したいのか、この点を掘り下げることが重要です。
また、そこに到達するまでの過程についても説明することで、より具体的なビジョンを持っていることを伝えることができます。
過程をイメージできていれば、質問が「5年後のキャリアプラン」や「15年後のキャリアプラン」となった場合にでも対応しやすくなるはずです。

 

役職やポジションについてのこだわりを見せることは避けた方がいいかもしれません。
どうしても譲れなければ別ですが、あまり権力欲がちらつくと良いイメージを持たれなくなってしまう恐れがあります。
技術、知識、仕事内容、それらを活かした上での貢献度、こうしたことをキャリアプランとして伝えることを意識するようにするといいでしょう。

 

さらには、こうしたキャリアプランが転職理由や志望動機と繋がることも意識したいところです。
「だからこそ、この医療機関(企業)への転職を望んだ」という点を伝えることで、より意志の強さや人間性、視野の広さや計画性等もアピールできるでしょう。

 

Q4.当病院(クリニック)を選んだ理由は何ですか?

これはいわゆる志望動機ですが、面接における最も重要なポイントとなる事が多いです。
この質問の答えには、以下の要素を含ませることをお勧めします。

・その医療機関や企業の診療内容や症例及び業務内容
・医師自身の実績やキャリアプランとの関連性
・医師自身の転職理由との関連性
・他院や他企業との相違点
・転職後に貢献できる点

「なぜ他の医療機関ではダメだったのか」という点と、「しっかりとリサーチしてきているか」という点に着目し、面接官はこの質問の答えを聞いています。
その部分を丁寧且つ明確に伝えられるかが鍵となるでしょう。

 

他院との相違点に関してですが、他の医療機関等を蔑む必要はありません。
むしろそうした物言いは避けてください。
あくまでも面接を受けている施設に当てはまる特徴等に触れ、理解度をアピールし、自身の実績やキャリアなどを強調するといった答え方が理想です。

 

Q5.当病院(クリニック)で活かせるスキルや経験はありますか?

採用側が知りたいのは、「当院の求めるスキルや技術などを持っているのか」という点です。

できるだけシンプルに、且つ適切な答えを選択しましょう。
面接先で取り扱っていない症例に対する成果を取り上げても、プラスの評価には繋がりづらいと思っておいてください。
また、医師であれば誰でも備えているようなスキルのみでは、これも効果的なアピールには繋がらないでしょう。

 

他の医師よりも優れた点を、面接先の医療機関で扱っている症例や考え方、医療体制等と照らし合わせて、いかにそれらが合致しているのかを伝えられるかが重要です。

 

診療技術はもちろんですが、コミュニケーションスキルやリーダーシップなども同時にアピールすることで、より採用の確率は高まるでしょう。
このあたりも意識しつつ、数字で表せる実績も合わせて主張することが求められます。

 

Q6.将来的に開業のお考えはありますか?

独立や開業の意志を持っていることは問題ありません。
しかし、面接先の医療機関によっては、開業の意志が採用にマイナスに働くこともあります。

 

特に応募先が病院であれば、できるだけ長い間働いてもらいたいと考えているはずです。
安易に開業に積極的である姿勢を見せる必要はないでしょう。

 

クリニックの場合には、開業に対する意欲がプラスに評価されることが考えられます。
開業までのプランにもよりますが、開業時期が5年程度以降であれば、少なくとも極端なマイナス評価となることはほぼありません。

 

医療機関側がどのようなポジションの医師を探しているのか、ここを丁寧にリサーチしましょう。
それにより、面接で開業の意志を示すべきか否かの判断がしやすくなります。
間違っても数年以内など、近い将来に開業の意志があることは主張しない方がいいでしょう。

 

面接時に医師から行う逆質問について

一般企業の面接と同様に、医師の転職に関わる面接であっても、逆質問は避けて通れません。
面接の終盤で「何か質問はありますか」と必ず問われるので、その内容についてあらかじめ考えておき、効果的な質問ができるよう準備しておきましょう。

 

まず意識したいことは、面接の流れに沿うことです。
例えば、自らの経験や実績を踏まえた上で、具体的にどのような場面でそれが発揮できるのか、そのようなポジションや役割を与えてもらえるのか、について尋ねるなどします。
すると、より意欲の強さを伝えることに成功し、且つ転職後の自身の立ち位置が面接の段階でイメージしやすくなるはずです。

 

相手側が医療機関等についての説明を面接の中でしたのであれば、それに触れながら質問することで、面接先の病院やクリニック等の実態をさらに掘り下げることもできます。
面接の流れに沿った逆質問を繰り出すことができれば、コミュニケーション能力や対応力等も示すことができるでしょう。

 

「特にありません」はNG

充実した面接であっても、「特にありません」と答え、面接を終わらせることは避けた方が無難です。
面接先に対する興味が薄いと感じ取られてしまうリスクが生じるためです。

 

具体的な仕事の内容や、どのような医療を目指しているのか、面接先施設の方針や方向性、具体的な実績などを尋ね、面接先への興味や入職の意思・意欲といったものを伝えましょう。
ただし、それらが得やすい情報ではないことも事前に確認しておいてください。


すぐに調べられることを把握していないとなれば、それも、面接先に対する興味が薄いと感じ取られてしまうためです。
「医療機関のサイトや求人情報から得ることは難しいものの、医師にとって重要な点」について尋ねることが求められます。

 

面接後に疑問が残らないよう遠慮なく質問する

逆質問の時間は、医師に与えられた非常に重要な時間です。
無駄にしないよう、聞き出したいことやわからないことについては、必ず尋ねるようにしてください。

 

待遇や福利厚生などの諸条件に関しても尋ねて問題ありません。
こうした質問は印象を悪くするという風潮もあるものの、未確認のままの転職はあまりにも危険です。
転職の後悔を回避するためには、面接の段階で条件等も明確にしておく必要があります。

 

ただし、上記で触れたような業務内容やポジション、面接先の方針や具体的な症例等、医師としての仕事に関連する質問をした上で、待遇等の質問を切り出した方がいいでしょう。
年収や休日等にしか興味がないと思われることは避けたいところです。

 

面接は採用側と医師がお互いを見極め意向をすり合わせる場

面接対策を行う際には、面接が何のために行われているのかを意識することが重要です。
医師側も医療施設側も、それぞれがお互いを見極め、どのような条件の元で働く、あるいは働いてもらうのかをすり合わせる場が面接です。
この点を意識することで、より有効性のある対策を行うことができるでしょう。

 

医師側が一切の妥協もせずに自らの主張のみを繰り広げる場でもなければ、病院やクリニックなどが医師の足元を見る形で行うものでもありません。
譲れる部分は譲り、お互いにとってベターで前向きな状況及び環境を作り出す場であると認識しておくと、スムーズに運ぶでしょう。

 

譲れない部分はしっかり伝えること

妥協点を見出すことは重要ですが、絶対に譲れない点に関してはしっかりと主張する必要があります。
これはわがままとは異なり、医師自身のキャリアを有意義なものにするために必要な考え方だからです。

 

特に待遇面に関しては丁寧に話し合いましょう。
年収か、それとも勤務体制か、あるいは役職やポジションかもしれません。
医師により異なりますが、転職するにあたって最も重要視する点は伝え、その上で医療機関側との交渉を進めることが重要です。

 

譲れない部分を主張することにより、ネガティブなイメージを持たれてしまうこともあるでしょう。
それでも譲れないことなのであれば、後悔を避けるために明確に伝えるべきです。
この点を曖昧にしたまま転職すると失敗に繋がるケースも多く、転職のメリットを最大化することはできないでしょう。
お互いに納得した上で仕事ができるよう、条件や待遇、その他譲れない点の伝達については徹底することをお勧めします。

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