AI(人工知能)とは
AIは「Artificial Intelligence」を略したものであり、日本語では人工知能と表現されます。
これに明確な定義はありません。
人が脳で考えることをロボットなどに代替させようという考え方もあれば、人間の知能を持つロボット等を作り出そうとする考え方も存在しています。より実用的なものとしては前者、SFの世界では後者が目指されることが多いでしょう。
間違いなく言えることは、これからの社会はAIの発達とともにあり、それは医療業界とも無関係ではいられないということです。
AI医療のメリットとデメリット
AI医療は人手不足解消や診断の正確性を上げるという点でメリットが大きいと考えられています。
医師不足が深刻な日本において、属人的な医療では限界が生じ、また、ミスの発生も避けられません。
AIを導入することでそれらを回避・防止しようということが現在試みられています。
AI医療は現場の効率化にもつながり、延いては患者や社会にとっても大きなメリットとなるでしょう。
安心安全な医療が提供できるとともに、これまでは不可能だった診療が行える可能性も秘めています。
一方で、医師と患者の距離感に対する懸念もあります。つまり、コミュニケーションの希薄化です。
病気は治療できても心のケアの面でデメリットがあると指摘されることも多く、この点はAI医療の課題となるでしょう。
また、AIによる診療で医療事故が発生した場合の責任の所在が不明瞭な点も指摘されています。
日本国内のAI医療の現状
すでに医療業界でもAIの導入や活用が進んでいます。
例えば、カルテの作成や患者の予後のデータをまとめたりなど、すでにAI技術が導入されている分野も少なくありません。過去の症例から新たな患者の状態を診断し、疾患の可能性を見出すAIシステムを導入している医療機関も徐々に増えてきています。
ただ、現状はまだ補助的な役割を担ったり診断の参考にする程度であり、AI医療の本領が発揮されているとは言えないでしょう。
特に日本は、AI医療の分野ではアメリカや中国に遅れをとっている状況です。
医療現場でAIの活用が注目されている理由
医療関係者、特に研究者たちはAIの導入や活用に期待を寄せています。
政府もこれを促進しようと総務省を中心に取り組んでいるのですが、なぜこれほどまでに医療現場でのAIの活躍が注目されているのでしょうか。
いくつかの理由を挙げながら、それらが医療業界や医療現場にどのような影響を及ぼすのかを見ていきます。
理由①医療の質を向上させる
AIが進化することで、医療の質や精度が上がることは間違いありません。
1人の医師の持つ知識や経験には限度があります。
それをAIが補助することにより、適切な診断や治療方法の選択がしやすくなるのは当然でしょう。
医師が見逃してしまっていた可能性の発見にもつながり、医療事故をはじめとした勘違いやミス、思い込みといったものを排除することも期待されます。
理由②膨大な医療データを活用できる
AIは膨大な医療データを元に、診断や可能性の抽出を行うことができます。
周知のとおり、人間では何万年かかっても処理できないデータを、AIでは一瞬で行うことも可能です。
文字や数字による情報のみならず画像の解析等もできるため、より正確な判断や、人間では見落としがちな詳細な情報まですくい取れる事が強みでしょう。
また、AIの優れた点は、膨大なデータがあればあるほど正確性が増す点にもあります。
学習能力を持つことで、新薬の発見のように新しい可能性を見出す事が期待されています。
理由③医療現場における労働の効率化が可能
医師不足や医療機関不足は、人口が減少する日本において早急に解決すべき重要な課題となります。
高齢者の増加がその主な理由ですが、これをAIで解決しようという動きがあがってます。
これまで医師が行っていた診断をAIが担うことになれば、医師の負担は大幅に軽減されるでしょう。
人がやるべき仕事と、AIやロボットが担うべき仕事を上手に分けることができれば、医療現場の効率化が進み、医師にとっても患者にとっても大きなメリットがもたらされるはずです。
理由④医療機関での待ち時間の解消と適切な情報提供
AIの導入や活用が進めば、待ち時間の解消や、適切かつ詳細な情報提供も可能となります。
受付をAIが行うことで、人手不足など関係なく患者はスムーズに医療機関を受診することができるでしょう。
AIにより院内業務の効率化を図ることで事務作業をはじめとした処理速度も上がり、これも外来患者の待ち時間の減少へと繋がります。
今やコンビニやスーパーなどの小売店で急速に導入が進んでいるキャッシュレス決済システムですが、これもAIを活用しながら医療機関でも導入が促進されれば、受診料や治療費の支払い、薬剤の購入等も速やかに行うことができるでしょう。当然、これも待ち時間の解消に直結します。
また、インターネットを通じていつでも情報が配信・更新される状態が整えられれば、適切な情報提供へと繋がります。
患者がこれまで医師を通じてしか得られなかった情報についても、AIを通じて、患者自ら病状等を詳細に把握することができるようになるでしょう。
医師も自らの経験のみに頼らず、客観的な視点での患者への説明や方針の提案が可能となります。
いずれも医療機関や医師と患者の双方にとってメリットとなり、お互いにストレスなく診療・受診等ができるようになるはずです。
医療現場でAIの研究・活用を進める企業と取り組み内容
日本と同様に、海外でも急速にAIの医療現場への導入が進んでいます。
ここからは、具体的に企業がどのようなAI技術の開発や取り組みを行っているのかを紹介していきましょう。
日本企業×AI医療
AIを活用し、世界平和を実現することを大きな社是として活動する『株式会社9DW』は、医療に関わるAIの開発にも着手しています。
得意とするのは診断補助システムです。診断レポートの作成補助システムも含め、こうした分野のAI開発を積極的に行っています。
音声認識システムや文字認識システムにもAIを活用し、医師の声やメモからのカルテ作成により、事務作業の効率化を図る試みも行なっています。
世の中のサービスとAIを結びつけようと各事業を展開している『aiwell株式会社』も、非常に注目されている企業の一つです。
個人が生活の中で触れるあらゆるデータを解析し、適切なサービスを提供するAIパーソナライズや、たんぱく質の変化等を見極めることで病気予防などが効果的に行える「AIプロテオミクス」などの事業を柱に開発を進めており、今後のAI医療の分野での活躍が期待されています。
他にも、『サイバネットシステム株式会社』は、AIを用いた大腸内視鏡診断支援ソフトウェアを開発。
これにより腫瘍の識別の精度を上げることが可能となります。
すでに承認を受けているため、今後医療現場で活躍してくれることは間違いありません。
このように、日本の大学や研究機関のみならず、民間企業でもAI医療分野への参画が進められ、すでに実践で活用される場面も増えてきている状況です。
海外企業×AI医療
電子機器開発や臨床用ソフトウェアの開発等のノウハウを持つ『Verily Life Sciences社』が、『Google社』とともに、AI技術を取り入れた網膜眼底画像解析システムを開発しています。
これにより、脳卒中や心筋梗塞など重大な疾患のリスクを判断できるようになります。
AIのアルゴリズムを活用しているため、医師が行っていた作業の効率化等ではなく、AIにしか不可能な診断システムが開発されたと言えるでしょう。
『アメリカIBM』の開発した人工知能コンピューターである「ワトソン」は、遺伝子情報の解析により、がん患者の診断を行うことに成功しています。
実際に、このワトソンの発見により適切な治療を行うことができ患者の命を救うことができたという事例もあります。
続々と登場する医学論文をワトソンが学習し、それを元に解析。
患者の症状等から必要な情報を引き出し、疾患の判断やリスク等の情報を提供しています。
医師はこうした情報を参考に治療方針を決定できるため、正確な判断に繋がることはもちろん、大きな負担軽減にも寄与することになるでしょう。
日本国内のAI医療の今後
諸外国に遅れを取るまいと、日本国内でもAI医療の研究や開発、議論や支援等が活発化してきています。
厚生労働省も積極的に認可する方向へと動き出し、日本国内のAI医療技術が急速に発展する土台は整いつつあります。
厚生労働省はAIを活用した医療分野の研究や開発において、ゲノム医療や画像診断支援、医薬品開発等の取り組みを推進していく方針を打ち出しました。
さらに高齢化社会に向けて、介護や認知症、手術支援などにもAIを活用することを目指しています。
一方で、実際に医療現場に取り入れるとなると、依然ハードルが高い技術も多く存在します。
今後は研究や開発のみならず、国民の理解や倫理的な価値観といった課題を乗り越える必要も出てくるでしょう。
これらの問題を乗り越えた先に、日本のAI医療における一層の発展が期待されています。
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