愛知県の医療の現状について
愛知県の医師数について
愛知県は、医師不足が非常に顕著で深刻な問題となっている地域の一つです。
愛知県の「医療施設に従事する医師数」は全国で4番目に多い15,600人ほどですが、「人口10万人あたりの医師数」は208人ほどで、
これは全国でも38番目となっています。
人口対医師数の全国平均は約240人ですので、医師の数がだいぶ不足していることがわかるでしょう。
愛知県では、小児科医や産婦人科医の医師数も極端に足りない状況です。
「人口10万人あたりの小児科医数」は全国平均約107人のところ、愛知県は約89人と、10万人あたり20人ほど不足しているのが現状です。
産婦人科医は、人口10万人あたり約42人。全国平均との差はわずかであるものの、全国で34番目に低い数字となっています。
愛知県の人口は年々増加傾向にあり、特に都市部へと人口が集中する動きが強く、これが医師不足を加速化させる大きな要因となっていることは間違いありません。
愛知県の医療施設等の状況
現在、愛知県内にある病院の数は約320施設となっています。
これは全国的に見ると少ない数字ではないものの、一般病院に関しては減少傾向が見られることも事実です。
愛知県が精神科病院も含めて病院数が最も多かったのは平成2年で、477施設ありました。
そして精神科病院の数は当時と比較して増えている一方で、一般病院は100施設以上も減少しているのです。
愛知県の「人口10万人あたりの病院数」ですが、約4.3施設となっています。
全国の平均が6.7施設であることを考えれば、医師とともに病院の不足も深刻な問題と捉えることができるでしょう。
続いて一般診療所ですが、現在5,300施設ほどが存在しています。
無床診療所に関しては増加傾向が見られますが、有床診療所は年々減少している状況です。
人口流入に伴い、美容外科や皮膚科など若い人も通う診療所が増えていることが、こうした傾向からうかがい知ることができます。
また、愛知県では病床数そのものも減少している状況です。
全体の病床数は平成2年には74,000を超えていたものの、現在では67,000台となっています。
愛知県の事業別の医療体制
救急医療体制
愛知県の第一次救急医療体制ですが、休日夜間診療所が県内に40箇所以上設置されています。
ほぼ全ての地域で「休日夜間診療所が設置されている」または「在宅当番医制が実施されている」という点で評価できそうです。
続いて第二次救急医療体制ですが、こちらは県内の約90もの医療機関が「病院群輪番制」に参加しています。
第三次救急医療体制に関しても、20箇所以上の救命救急センターが設置されており、24時間体制で重病患者の対応が行える体制です。
また、愛知医大病院にはドクターヘリが常駐し、他県への出動要請も受けています。
このように愛知県は「充実した救急医療体制が構築されている」といえるでしょう。
災害医療体制
愛知県では南海トラフ地震への備えなど、災害医療対策が整備されています。
「本部災害医療コーディネーター」「地域災害医療コーディネーター」及び「災害薬事コーディネーター」が任命され、
災害派遣医療チームとともに連携や体制への強化を推進しています。
この「災害派遣医療チーム」は、現在のところ9チームの編成が可能な状況です。
もし災害が発生すれば「航空搬送拠点臨時医療施設の設置」も可能。
被害を最小限に抑えるとともに、迅速に患者等へ対応できるような体制が整えられています。
周産期医療体制
愛知県の周産期医療体制に関してですが、この分野の医師数は増えてはいるものの、依然として医師不足状態の解消には至っていません。
分娩が可能な病院は県内に約50施設、診療所は80施設以上存在しているものの、東三河北部医療圏にはこうした医療機関がありません。
また、うち10か所の医療機関では、医師不足により「分娩に関する診療制限」が行われている現状があります。
さらには4施設ほどで分娩を休止しているなど、決して周産期医療体制が十分であるとは言えないでしょう。
小児医療体制
愛知県内の小児医療の提供状況ですが、地域による偏在が見られます。
「名古屋」「尾張中部・東部」の各二次医療圏は、小児科医が比較的充実している現状がありますが、「海部」「西三河南部東」「東三河北部」の各二次医療圏では不足状態が続いています。
一方で、小児への虐待に関する対応として、愛知県内ではすべての市町村に要保護児童対策地域協議会を設置しています。
医療だけではなく福祉や教育分野などとの連携もはかり、虐待を受けている児童の保護などの取り組みが強化されていると言えるでしょう。
僻地医療体制
愛知県の僻地医療体制として、現在は「4つの市と3つの市町村内」にある「9つの診療所を僻地診療所として指定」しており、各地域からの要請で医師の派遣等を行っています。
さらに県内では7つの病院を僻地医療拠点病院として指定。医師が存在しないエリアへ診療に出向くなどの取り組みが行われています。
また、僻地医療支援機構が「僻地での臨床研修の実施」や「僻地医療研修会の開催」など様々な支援を行っており、
「医師の偏在」や「医療提供体制のばらつき」の是正へとあたっている状況です。
愛知県の患者の受療状況
愛知県の「患者の受療動向」ですが、入院患者数は1年間で約56,000人となっています。
二次医療圏で最も多いのは名古屋で約20,000人。次いで東三河南部の約6,800人。さらに尾張東部、尾張北部の約5,000人と続きます。
そして総患者数のうち、県内に居住している患者の数は約53,400人です。
年間2,000人以上が県外から入院のために愛知県の病院を訪れていることがわかります。
続いて「入院患者の受療率」ですが、愛知県全体で見ると人口10万人に対して710人ほどとなっています。
この約710人という数字ですが、全国的には非常に少ないと言えるでしょう。
入院受療率の全国平均は約1,030人ですので、10万人あたり200〜300人ほど少ない数字となっています。
また、「外来患者の受療率」は人口10万人あたり約5,950人です。
こちらは、外来患者の受領率の全国平均が5,700人ほどであることを考えると、正常な範囲内の数値でしょう。
愛知県が行っている医師の確保・支援の取り組み
愛知県医療勤務環境改善支援センター
愛知県では「愛知県医療勤務環境改善支援センター」において、医療機関における勤務改善の取り組みへの支援を行っています。
人材が定着しないと悩む医療機関に対し、子育てや介護の両立の支援を行ったり、医療従事者の安全を確保することで満足度の向上を目指す取り組みなどを実施。快適に働ける環境の形成や、医師の健康に関する支援も行っています。
さらに、働き方だけではなく「休み方などに関するアドバイス」も行うなど、就業規則の見直しを支援しています。
長時間労働等の改善を行うことで、医師の離職率を下げる効果が見込めるでしょう。
これら愛知県医療勤務環境改善支援センターの取り組み自体は、医師確保の観点というよりも「医療施設に対する支援」という意味合いが大きいかと思われます。
しかし、労働環境が改善されれば医師が働きやすくなることは間違いありませんので、結果的に医師の確保や支援へと繋がり、提供する医療の質の向上にも寄与するはずです。
愛知県医療勤務環境改善支援センターでは、他にも勤務環境改善マネジメントシステムの導入支援や、医業経営のプロフェッショナルによるアドバイスなどを行っています。
愛知県地域医療支援センター
愛知県内の医師不足の状況などの整理・分析を行い、医師確保のための取り組みや医師への支援を行っている事業体が「愛知県地域医療支援センター」です。
これは愛知県健康福祉部保険医療局内に設置されたもので、設置年は平成27年と、スタートを切ったばかりの事業体になります。
愛知県地域医療支援センターでは、各地域だけではなく、各病院でどの程度の医師不足が起こっているのかなどを調査しています。
そこから詳細な分析を行い、支援が必要な医療機関を判断。医師の偏在の問題をなくすための取り組みへと、その調査や分析結果を生かし、医師が必要な医療機関のサポートを行っているのです。
また、「地域枠医療確保修学資金貸付金制度」や「医師派遣推進事業補助金制度」のように、経済的な支援を各医師や各所に行う取り組みも目立ちます。
仕事を探している医師に対しては医師無料職業紹介事業、いわゆる「ドクターバンク事業」を通じて、県内の医療機関を積極的に紹介しています。
女性医師への復職支援や短時間勤務を可能にするための「女性医師等就労支援事業」も、当センターの事業の一つです。
より高度な技術を持った医師の育成にもあたっています。 医師のスキルアップに関わる事業としては、「先進的医療技術向上専門研修事業」や「総合医養成推進事業」があり、「専門医認定支援事業費補助金制度」も設けています。
このように、単に医師の確保だけを目的としているわけではなく、有望な医師の育成にも尽力していることがうかがえるでしょう。
また、当センターでは僻地医療支援機構を設置し、僻地医療対策にも乗り出しています。
県内では二次医療圏ごとに医療資源の状況が異なるため、こうした取り組みで是正を図っている渦中です。
特に僻地に対しては「積極的な医師の派遣」や「僻地医療拠点病院や診療所への助成」を行っている状況です。
医学生への支援
愛知県では、将来的に県内の医療機関で働く意思のある学生に対して「愛知県地域医療確保修学資金制度」を設け支援しています。
主に名古屋大学や愛知医科大学などで医学生を募集。
1年生は年額210万円、2〜6年生は年額180万円の貸与金額となっています。
医師不足が顕著な「小児科や産婦人科を希望する生徒」に対しては、5年生時と6年生時に、さらに月額5万円がプラスされます。
大学卒業後、県内の医療機関で臨床研修を行い、さらに指定された医療機関で7年間働くことで、修学資金の変換が免除される仕組みです。
条件はいくつかあるものの、県内での医師確保の取り組みの一つとして、大きな効果が期待されています。
愛知県の医師求人の特徴
愛知県内は、地域ごとに医療環境や医療体制などが異なります。
名古屋医療圏は病院数も診療所数も非常に多いため、求人数も常に供給過多な状況です。
しかし、給与額などを見ると平均額はさほど高くありません。
都市部によく見られる現象ですが、一部クリニックなどを除いて、あまり高い報酬を期待することは難しいでしょう。
一方で、医師不足が顕著な地域では高待遇の求人ともしばしば出会うことができます。
特に医師不足が深刻な東三河北部医療圏などでは、比較的高い年収の確保が期待できるでしょう。
また、人口が非常に多く外来患者の受療率も高い愛知県では、特に「内科医の不足」が目立ちます。
そのため内科医を募集している医師求人が後を絶ちません。
同様に「小児科医や産婦人科医の確保」も課題となっており、求人数が非常に多い状況です。
まとめ
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