北海道の医療の現状について
北海道の医師数について
北海道の医師総数は13,000人を超えています。
二次医療圏別に見てみると最も多いのは「札幌医療圏」で、6,500人以上となっています。1,000人前後の医療圏には、「上川中部医療圏」と「南渡島医療圏」があります。
「人口10万人あたりの医師数」でも、札幌医療圏が最も多くの医師を抱える形となっています。その数は280人で、全国平均(240〜250人)を超えており、人口に対してある程度の医師数が確保できていると言えそうです。
しかし北海道全体では「人口10万人あたりの医師数」は約240人にとどまっています。
これは全国平均と同程度ですが、医師が充足している状況とは決して言えないでしょう。
「根室医療圏」では「人口10万人あたりの医師数」が110人程度と、深刻な医師不足に陥っています。
広大な土地であるために、地域ごとの差が大きくなってしまっている点は否めません。
このように北海道は「地域ごとの人口密度の違い」が大きく、「医師数の多いエリアと少ないエリアの差が激しい」という点が特徴と言えるでしょう。
北海道の医療施設等の状況
北海道には、560以上の病院があります。これは東京都に次いで、全国で2番目に多い数字です。
「人口10万人あたりの病院数」は、約10.5。全国の平均値は約6.7なので、北海道の人口からすれば、多くの病院が運営されている状況がうかがえます。
次に診療所に目を移してみると、北海道には約3,400施設が存在しています。
こちらも決して少なくはないですが「人口10万人あたりの診療所の数」は60強となっています。
全国平均は80施設ですから、東京や神奈川、大阪、愛知などの大都市と比べて少ないと言えるでしょう。
医師数と同様に、病院数や診療所数も「札幌医療圏」に集中しています。
どちらも道内におけるシェア率は40%を超えているため、北海道にある半分近くの病院及び診療所が札幌医療圏内にあるという事になります。
北海道の事業別の医療体制
救急医療体制
北海道内では初期救急医療体制として、39の「郡市医師会」が「在宅当番医制」を実施しています。また、16の施設が「休日夜間急患センター」としての役割を担っている状況です。
二次救急医療機関としての役割を担っている医療施設は、全部で290以上あります。
このうち「救急告示医療機関」は275施設、「病院群輪番制参加医療機関」は140施設となっています。
三次救急医療については現時点で「救急救命センター」が12施設あり、このうち1施設は「高度救命救急センター」として重篤救急患者の治療にあたっています。
また、全4機のドクターヘリを配備し、より迅速な搬送や治療を行えるような体制も組まれるなど、整備されている状況です。
災害医療体制
北海道では、いつ起こるかわからない災害に備え、災害拠点病院の整備に尽力してきました。道内の1施設を「基幹災害拠点病院」、その他33の病院を「地域災害拠点病院」として指定しています。
北海道では災害医療に携わる「拠点病院の存在しない二次医療圏」は存在せず、どのエリアでも災害医療体制が一定整備されている状況です。
また、災害時に救護や医療で大きな役割を発揮するチーム「DMAT」の養成を推進している事も特筆すべきでしょう。このチームは災害拠点病院すべてに配置され、緊急時に備えています。
このように、北海道の災害医療体制は非常に充実しているといって問題ないでしょう。
実際に災害が起きた際の連携や必要な食料、飲料等の備蓄なども一定確保されており、もしもの時には即座に対応できる体制が整えられています。
僻地医療体制
北海道内には、まだ医師が常駐していないエリアが一部存在しています。
こうした状況を是正するため行政は「北海道僻地保健医療計画」として、僻地での医師確保や、僻地で急患が発生した際の救急搬送体制の確保に動いています。
また、北海道にある25の地域センター病院のうち19施設は、「僻地医療拠点病院」に指定されています。
「僻地の診療所からの患者受け入れ」「医師が常駐していないエリアへの訪問診療」「遠隔診療」などを行うことで、僻地でも迅速な対応が受けられるようなサポート体制を整備しているところです。
周産期医療体制
北海道では、周産期に関わる医師の不足状況が深刻化しています。
分娩を取り扱う医療施設は減っており、エリアによっては安心して周産期医療を受けられないところも出てきている状況です。
道政はこの状況を打開しようと「北海道周産期医療体制整備計画」を策定。
各医療圏で「総合周産期母子医療センター」や「地域周産期母子医療センター」の認定を進めるなど、周産期医療体制の整備を精力的に行っているところです。
こうした「周産期医療センター」では、医師や看護師への研修などスキル向上のためのサポートも実施しています。
また、「北海道周産期救急情報システム」によって、妊産婦や新生児の受入情報について、センターと医療機関・消防機関の間で連携や情報共有が円滑に進むよう、体制が整えられつつあります。
小児医療体制
道内で従事する小児科医の数ですが、思うように増えていない実情があります。
同時に、都市部に医師が集まる傾向も見られるため、北海道内では「小児医療に携わる医師の偏在問題」が顕著となってきています。
こうした課題を解決するためには、特に小児科医の勤務環境の改善が必須になるでしょう。
ただし現段階では具体的な事業や支援が整備されているとは言えず、行政レベルでの大きなテコ入れが求められています。
一方で、小児救急に関しては「小児救急医療支援事業」を立ち上げ、輪番制による二次救急医療体制の確保を推進しています。
他にも、保護者の相談を随時受け付ける「小児救急電話相談」をはじめ、情報共有等を目的とした「北海道救急医療情報・広域災害情報システム」など、救急医療に関する啓発事業を行っています。
このように北海道の小児医療体制については、「医師の偏在」などの課題はあるものの、必要な医療機能はある程度確保されていると言ってもいいでしょう。
北海道の患者の受療状況
北海道の「人口10万人に対する北海道の入院患者の受療率」は、1,450人程度となっています。
全国の入院患者の受療率を平均すると1,040人程度ですので、北海道では入院する患者数が比較的多い状況です。
しかしながら北海道は病院数が多いため、病床数も100,000前後と充実しています。
「人口10万人あたりの病床数」も約1,780と多いため、入院患者の受け入れ態勢が比較的整っていると言えるでしょう。
一方で、北海道の「外来患者の受療率」は全国平均5,700人程度に対して、5,030人程度と少ない状況です。
病院数が充実している割に外来患者が少ないという事が、高い入院受療率へと繋がっていると推測できます。
北海道が行っている医師の確保・支援の取り組み
北海道地域医師連携支援センター
北海道では医師数を増やすため、「北海道地域医師連携支援センター」を立ち上げて、様々な取り組みを行っているところです。
こちらのセンターでは「キャリア支援」や「道内の医療施設への就職支援」はもちろん、「復職支援」や「アンケートによる実態調査」など、幅広い事業を展開しています。
特に評価されるべきは、他県から移住する医師に対しての転職サポートです。
このサポートに申し込むと、医師は自身で地域医療視察を行いながら、必要に応じて医療現場を体験することができます。
さらに、視察に必要な費用(交通費・宿泊費)も北海道が負担し、日当も支給される他、希望があれば道の職員が随行することも可能です。
経費不要で「実際に現場を見てから勤務先医療機関の決定を行える」という点では、医師にとって非常にメリットが大きい取り組みだと言えるでしょう。
同様に、道政では勤務環境の改善へ向けた取り組みも強化しています。
「北海道医療勤務・環境改善支援センター」を設けて随時相談を受けるなど、医師が働きやすい労働環境の構築に取り組んでいる状況です。
北海道の女性医師に対する支援
北海道の女性医師に対する取り組みはどのようになっているのでしょうか。
まず前項でご紹介した支援センターでは、「北海道医師会・女性医師等支援相談窓口」のように、女性医師の復職に関する相談窓口も設けています。
他にも「北海道地域医療振興財団」の運営する「女性医師専用バンク」に登録すると、女性医師向けの求人情報を確認する事が可能です。
さらに北海道で働きたい女性医師に対しては、「北海道女性医師の会」や「日本医師会女性医師バンク」などの団体が支援を強化しています。
このように、出産や育児が一段落した女性医師が「再就業」や「安心できる勤務環境」を実現できるよう、様々な取り組みが進んでいることが伺えるでしょう。
医学生への支援
北海道では、「修学資金貸与制度」によって医学生のサポートを行っています。
この制度に申し込むと、指定の各大学への入学決定後は「入学料・授業料・生活費」など、卒業するまでの6年間で合計120万円以上の経済的支援を受けることが可能です。
そして貸与された修学資金は、医師となった後9年間のうち「5年間を北海道知事の指定する医療機関に勤務する」ことで、返済が全額免除されます。
勤務先は「医師不足が深刻な医療機関」となることが多いですが、経済的な心配をせずに医師を目指せる点は大きいでしょう。
北海道の医師求人の特徴
最後に北海道の医師求人状況ですが、内科医を募集している医療機関が目立ちます。
特に総合内科の需要は高く、広い視野で診療可能な医師が求められています。
外科系医師の募集も多くありますが、専門性の高い医師よりも、幅広く対応できる一般外科医のニーズが高い印象です。
高度なスキルアップを目指すための求人よりは、これまでの経験を活かせる求人を探している医師の方にオススメできます。
次に求人の地域差ですが、「札幌医療圏などの都市部」では求人数こそ多いものの、待遇に関してはあまり期待できないでしょう。
これまでの実績が豊富であれば別ですが、基本的には「年収アップを目的に転職を検討している医師」にとっては、魅力的な求人が少ないという声が聞かれます。
その一方で、北海道の「医師不足が顕著なエリア」では、好待遇が期待できるでしょう。
常勤医師が求められるため当直を避けるのは難しいですが、道内で年収アップを目指すのであれば「過疎地や僻地の求人」に絞り込むことをおすすめします。
まとめ
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